【判例】理事長の解任について

質問掲示板に理事長に関する質問をたくさん頂いてます。ありがとうございます。ここで理事長の解任について、判例の解説をしたいと思います。

管理組合理事長を解任したら裁判になった

甲マンションにはこのような管理規約と、理事たちの対立という問題がありました。

  • 管理組合には、役員として理事長・副理事長等を含む理事並びに監事を置く。
  • 理事及び監事は、組合員のうちから総会で選任し、理事長及び副理事長等は、理事の互選により選任する。
  • 役員の選任及び解任については、総会の決議を経なければならない。

理事会内では、管理を委任する先の管理会社の選定問題で、理事長Aとその他の理事との間で意見の対立があった。
通常総会で5名の理事が追加選任された。
当該理事長Aは、他の理事から総会の議案とすることを反対されていた管理会社変更案件を諮るため、理事会決議を経ないまま、理事長Aが臨時総会の招集通知を発したことから、理事長Aを解任するための理事会を開催しようとしたところ、理事長は突然理由もなく欠席した。その理事会において、出席理事だけで理事長Aの役職を「理事長」から「単なる理事」に変更する旨の決議(理事長の解任決議)と新たな理事長を選任する決議が行われた。
解任された理事長Aは、理事長解任について無効を主張した。

主な争点

規約には、理事長職を理事の互選により「選任」する旨の定めはあるが、「解任」に関する定めはない。このような場合でも理事会で「解任」し、単なる理事に変更することは可能か。規約で、理事の解任が総会での決議事項とされていることはどう影響するか。

第一審は、理事長職の解任は総会が決めるべきだとして、理事会が互選でBの理事長職の解任を決めたことを無効であるとした。Aの控訴に対する第二審の判断も、第一審と同様であった。そのためAが上告受理の申立をした。

判決要旨

本件規約は、理事長を理事が就く役職の1つと位置付けた上、総会で選任された理事に対し、原則として、 その互選により理事長の職に就く者を定めることを委ねるものと解される。そうすると、このような定めは、理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により理事長の職を解き、 別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる趣旨と解するのが、 本件規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致するというべきである。 本件規約において役員の解任が総会の決議事項とされていることは、上記のように解する妨げにはならない。


解説

区分所有法上、区分所有者は、「規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって、管理者を選任し、または解任することができる」とされています。本件規約に基づいて、「理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができる」と解するのが相当と考えられ、このことは、理事の互選により理事長を選任する旨の規定の解釈から導かれるため、役員の解任が総会の決議事項とされていたとしても変わりありません。

マンションの理事長は、理事たちの互選で理事長を選任することができます。理事をたくさんおくりこめば理事会の多数決で解任も可能になります。このような実務の理解が正当であることが、最高裁判決で確認されました。理事会で理事長を解任する場合当人が欠席していていたとしても可能ですが、理事会の開催及び議題については、事前に通知を受けている必要があるので、その通知の事実を記録として残しておく必要があります。

理事長を互選で選任する時期は、総会で新理事が選任されたとき間を置かず、すぐに新理事会を開いて、新理事長を互選で選ぶというようにし、新理事が選任された総会の直後に新理事長を選ぶようにすれば、大きな問題にまでは発展しないかもしれません。
「理事長、副理事長、会計担当理事は、理事の互選により選任する。ただし総会で選任することを妨げない」
このような規約を入れておくのもいいでしょう。

注意

区分所有法第28条では管理者の権利義務は委任に関する規定に従うとあるので、任期途中で解任するときは、 解任するにやむを得ない事情がある場合を除き、損害賠償責任が生じます。(区分所有法第28条、民法651条2項)

経験上でも、管理会社に関する問題は、組合内部で深刻な対立を生むことが多いです。また、このような対立は理事長へ不信感を抱くきっかけにもなります。管理会社の選定問題に限らず、また理事会内外に限らずに常に透明性を確保し、問題と情報を区分所有者全員で共有し、結束を図ることが管理組合運営に必要です。 意見の対立はどんな管理組合にもありえることです。多数決で排除するだけでは一時的な問題の解決にしかならず、裁判のような大きな問題になることもあります。対立をどのようにして乗り越えて合意をまとめていくかを念頭に置きましょう。